なぜ糖質制限で甲状腺機能低下症(LowT3症候群)になってしまうのか?原因と解決法は?

なぜ糖質制限で甲状腺機能低下症(LowT3症候群)になってしまうのか?原因と解決法は?

糖化高血糖の記憶などの物々しい言葉によって糖質=毒だと洗脳されていると、糖質制限をして身体に不調が現れても再び糖質を摂ってみようという選択肢が出て来にくくなります。

そうするとやれビタミン○○が足りない、ミネラルが足りない、脂肪代謝がうまくいかない、だからエネルギーの源であるATPがうまく出てこないという思考に走ってしまいがち。

その結果、大量のサプリメントを買い込んで、気が付いたら一日のサプリが10個とか。。。

でもその不調、もしかすると単に糖質不足が原因かもしれないですよ。

糖質の制限しすぎは、LowT3症候群になる可能性が高くなります。

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LowT3症候群とは?

LowT3症候群(また非甲状腺疾患:non-thyroidal illness syndrome:NTIS)とは、身体が飢餓状態を感知したときに代謝機能を弱めるように作用するいわば身体の保護機能です。

私たちが収入が減った時に、お金を節約するのと同じメカニズムです。身体もエネルギー源が不足したときには、消費を抑えるように働きます。

LowT3症候群の場合は、甲状腺ホルモンのうちT3だけが低下しその他のT4やTSHなどのホルモンは正常値を示すことが特徴です。

しかし、LowT3症候群が長引けば次第にT4も低下し真性の甲状腺機能低下症に進行する場合もあるようなので決して軽視すべきではない症状です()。

(実際にそうなった方もいらっしゃいます)

甲状腺ホルモンの種類と基準値

甲状腺ホルモンには主に以下の種類があり、検査機関で若干の違いはあるもののおおよそ以下の範囲が正常値とされています()。

  • 甲状腺刺激ホルモン(TSH)0.45~4.21mIU / L
  • FT4(free thyroxine:遊離サイロキシン)0.93-1.71ng / dL
  • FT3(free triiodothyronine:遊離トリヨードサイロニン)2.2-4.3pg/ml
  • rT3(reverse triiodothyronine : リバースT3)9.2-24.2ng / dL

T4はT3より30倍から100倍程度の量を持ってますが、身体の代謝機能を司るのは主にFT3でありFT4の5倍程度の活性度を持つと言われています()。

ここでのT3の基準値は2.2以上となっていますが、3.0未満は十分低下傾向です。

昨年2.5を叩き出した私は周りの韓国人の中で最低でした。少なくとも私の周りの韓国人はみんな3.0以上です。

LowT3の症状

FT3が低値になると、身体には以下のような症状が現れてきます。

  • 脱力感
  • 筋力低下
  • 低体温
  • 手足の冷え
  • 太りやすい(痩せにくい)
  • 脱毛、薄毛
  • 浮腫み
  • 月経異常・無月経
  • 便秘
  • 食欲不振
  • 発汗の減少
  • 難聴
  • 目の霞
  • LDLコレステロールの増加
  • 成長遅延(子ども)

しかしT3が低下していてもこれらの症状を全く感じない人もいるので、少しでも思い当たる症状があれば甲状腺ホルモンの検査をしてみることをお勧めします。

恐らく潜在的なLowT3症候群はかなりいるのではないかと思われます。

また、糖質制限によって誘発されたLowT3症候群では、身体の代謝機能が弱まるにも関わらずタンパク質の異化が亢進するという研究結果もあります。(

筋肉は必要なものですが、必要以上の筋肉は身体にとっては負担になります。基礎代謝という維持費を払い続けないといけないからです。

収入が減っていろんな支出を抑えなきゃいけない状況では、必要以上のぜいたく品は売ってしまう、そういう理由から異化が亢進してしまうのかもしれません。

毎日プロテインを飲んでタンパク質をいっぱい食べているのにも関わらず血液検査ではいつもタンパク不足と言われる人はLowT3になっている可能性があります。

甲状腺ホルモンの働きを支配する酵素 Deiodinase

T3はT4を材料に作られます。T3の比率はT4に比べてわずかでしかありませんが、活性度の違いから大きな影響力を与えます。

甲状腺ホルモンの働きを調整するのは、チロキシン-5′-デヨージナーゼとよばれる酵素で、デヨージナーゼⅠ型(D1)、Ⅱ型(D2)、Ⅲ型(D3)の3種類があります。

最も重要なのはD1で、これが非活性のT4をT3へ変換します。

脳下垂体ではD2が制御します。

一方、D3はT4をrT3に変換します。rT3はT3の働きをブロックするので、これが増えてくるのは良いことではありません。(

なぜ糖質制限でLowT3症候群になるのか?

LowT3になるのは身体が飢餓状態だと感じた時です。

いわゆる極端なカロリー制限ダイエットをやったり、拒食症を持っている人がなったりします。

しかし糖質制限ではいーっぱい食べてる人でも、なっちゃう人は簡単にLowT3になっちゃいます。

糖質制限界で言われる糖質制限を始めてLowT3症候群になってしまう理由とは?

なぜ糖質制限ではいっぱい食べてるのに身体は飢餓状態になっちゃうのでしょうか?

よく言われるのは「脂肪(カロリー)も同時に制限しているから」という理由。

糖質制限しているつもりでも、カロリー制限が頭から抜けなくて脂肪制限も同時に行っているからだという説です。

本当に脂肪をたくさん摂ればLowT3が治るんでしょうか?(少なくともそのようなエビデンスはありません)

二つ目は「脂肪代謝が錆びついてるから」という理由。

これもよく聞きますね。一つ目の理論がガソリンが足りないとするなら、こちらはエンジンが鈍ってるとでも言いましょうか。

しかし、脂肪代謝が錆びつくという現象はそもそも生化学的にどういう状態を言っているのか私にはよくわかりませんし、きちんと説明された文献もありません。

最後に「ビタミンB群や鉄、亜鉛などのミネラルが足りないから」という理由。

これは可能性はないとは言えませんが、そうだとすると糖質制限を始める前からLowT3症候群だったという可能性の方が大きくなります。

カロリー制限と糖質制限ではどちらがLowT3症候群になりやすいのか

身体が飢餓状態を感じる場合にLowT3になるわけですが、カロリーを制限するよりも糖質を制限する方がLowT3になりやすいというデータがあります。(

参加者が800kcalの超低カロリー食を2週間にわたって摂取しつづけた場合、炭水化物が0%のグループではT3が47%減少したが、少なくとも50g/dayの炭水化物を摂取し続けたグループではT3は減少しなかったとのこと。

つまり身体は、低カロリーを飢餓状態と判断するのではなく、糖質不足を飢餓状態と判断するようです。

この論文の著者は、「食事中の炭水化物が人のT3産生における重要な調節因子である」とまとめています。

また別の研究でも、6人の健常者(男性)に総カロリーの85%、44%、2%の炭水化物制限食を同カロリーで与え、甲状腺ホルモンの変化を調べてた結果、2%のグループだけがT3が低下したそうです。(

他にもこちらの研究でも同様の結果が出ています。

これらの結果が示すことは、T3は単に炭水化物の量に依存して調節されており、カロリー摂取量によって制御されているわけではないということです。

言い換えれば、カロリー稼ぎにバターをどんなに一生懸命摂っても、炭水化物が足りなければT3は下がる、と。

わざわざ高級なバターを使ってバターコーヒーを飲んで「エネルギーチャージ!」なんてやっても炭水化物が足りなければT3は下がる、と。

T4→T3の変換はグルコースで行われる

結局のところ、T4からT3が作られるのには炭水化物が必要だということになります。

メカニズムはよくわかりませんが、甲状腺ホルモンの産生やT4→T3の変換はグルコースが必要だという説もあるようです。(

腸内細菌叢の乱れ

T4からT3への変換の約20%は腸で行われます。その際、スルファターゼとよばれる酵素が必要になります。

スルファターゼは腸内細菌が健全な場合には多く産生されますが、そうでない場合は少なくなるそうです。(

糖質制限でタンパク質や脂肪の摂取を増やす一方、野菜の量を減らして食物繊維やプレバイオティクスなど腸内細菌の餌になる栄養素をカットしてまうことは、腸内細菌叢の乱れに繋がります。

その結果、T4→T3の変換が弱まってしまうことも考えられます。

話は逸れますが、糖質制限を指導する医師や専門家たちの多くは、腸内細菌のことについて「まだよくわからない分野だ」という言い方をよくします(私もそうでした笑)。

しかし、いろいろ調べてみると腸内細菌叢の機能についてはかなり研究が進んでいることが分かります。分からないから気にしなくていいとは決して言えない分野です。

何故女性に多いのか?

糖質制限でLowT3になりやすいのは、圧倒的に女性が多いようです。これにもいろいろ理由が考えられます。

D1が減りやすい

T4からT3の変換を促すデヨージナーゼⅠ型(D1)は、女性が低くなりやすいという傾向があると言われています。(

何故なのかはよくわかりません。

コルチゾールと女性ホルモンの関係

長期的なストレス下ではコルチゾールの分泌が継続します。そうすると、女性ホルモンの一つエストロゲンが増えていきます。

コルチゾールにはエストロゲンを増やす作用があるからです。

エストロゲンが増えると今度は血液中で甲状腺ホルモンと結合しているタンパク質であるTBG(サイロキシン結合タンパク)の合成が促進します。

これが増えると血液中をふわふわしているFT4やFT3がTBGと結合し始め、FT3という活動的なホルモンが大人しいT3に変わってしまいます。

その結果Low(F)T3になってしまうという(富永康太氏の)説です。(

そもそも糖質制限を長期で続けること自体がコルチゾール増加を招くという研究もありますので(1011)、特に女性は炭水化物は摂っておいた方が無難です。

男性は甲状腺ホルモンの感受性が高まる?

「女性がなりやすいのではなく男性がなりにくいのだ」という説もあります。(12

ケトン産生食をしていると、甲状腺ホルモンの組織感受性が著しく増大し少ないFT3で十分に代謝機能を維持できるという説です。

まさにケトン賛美な説です。(証拠はありません。そうとしか考えられないという考察です)

LowT3症候群になってしまったら?

以上の考察から、LowT3症候群にならないようにするためには、適度な糖質を摂ることが重要であると結論付けられます。

しかし糖質制限の理論を学びすぎると糖質=毒だと洗脳されてしまい、糖化や高血糖の記憶という言葉にビビッて完全にカットしてしまいたくなる気持ちが出てくるのもよく分かります。

そういう方は糖質が毒ではないこと糖質が太る食材ではないこと糖質がヒトにとって必要な栄養素であることを頭でしっかり理解する必要があります。

糖質は毒じゃないんですよ。

まずは糖質を摂る

LowT3症候群を改善するにもまずは糖質が必要。私のフォロワーさんでも糖質制限でT3が2.0付近になっていた方が、糖質を摂りだして数カ月で3付近にまで上昇したという例があります。

しかし、糖質を摂ると言ってもどれくらい摂ればよいのでしょうか??

先ほどの研究結果()では、一日50gだけでも摂っていればT3は下がらないと報告しています。

安全なロカボ食を推奨する山田悟医師は、70-130g/dayを推奨。(13

「糖尿病は砂糖で治す」で知られる崎谷正博医師は250-300gくらいを推奨。Facebookで糖質制限の危険性を訴えている池澤孝夫医師もそれくらいを推奨されてます。

多くの先住民族の一日の糖質の摂取量は、120〜160gくらい(14)。

これらの値は最低ラインといったところでしょうか。

ちなみに、よく糖質制限推進派の医師の間ではイヌイットやマサイ族が糖質制限が安全な証拠だと言ってたりしますが、彼らも牛乳や野菜からしっかりと糖質を摂取しています。

セレン、亜鉛、ビタミンDを摂る

糖質制限以前に、最初から必要なビタミンやミネラルが不足していたという可能性も否定はできません。

ここでは、甲状腺ホルモンの代謝が正常に行われるために必要なミネラルとビタミンを紹介します。

なお、一般的にはヨウ素が最初に挙げらるところですが、海藻をよく食べる日本人はどちらかというと摂りすぎに注意すべきなので、敢えて含めないことにします。

(画像クリックでIherbサイトに飛びます)

セレン

セレンは、T4→T3の変換に必要なデヨージナーゼⅠ型(D1)の補酵素となります。(15

セレンを最も多く含む食材はなんと言ってもブラジルナッツ。

独特の香りがするので、苦手な人もいるかもしれませんが、一日2, 3粒程度食べれば十分なセレンを摂取することができます。食べすぎは中毒がでるので注意です。

我が家はこちらのブラジルナッツ

亜鉛

亜鉛はT3産生に必要なミネラルで、亜鉛が不足していると甲状腺ホルモンの代謝が正常に行われなくなります。

T4→T3の変換にも亜鉛が必要だと言われており、LowT3症候群を呈した患者に6ヵ月間の経口投与を行ったところ、T3のレベルが正常化したという報告があります。(16

亜鉛サプリは空腹時に飲むと吐き気をもよおすことがあるので、ピコリネートなどのキレート加工されたものが無難だと思います。

thorne reserch ジンクピコリネート

ビタミンD

ビタミンD欠乏症と甲状腺疾患には相関があり、特に橋本病などの自己免疫疾患との相関が指摘されています。(17

ビタミンDがLowT3症候群を改善するという研究報告はありませんが、甲状腺の機能を全般的に維持するためにはビタミンD不足にならないようにすることが大事なようです(18

血清ビタミンDを40-70ng/mlくらいを目標にすると良いと言われています。

ビタミンDサプリは最も安全で最も結果が出やすいのですが、昨今はフィッシュオイルを使用したものはあまり良い噂がありません。

こちらのサプリは非加熱のオリーブオイルが使われているのでその点は安心です。

タンパク質を摂る??

「糖質制限 LowT3症候群」で検索すると、タンパク質をたくさん摂れと言った記事がいくつかでてきます(19)(20

脂肪代謝が錆びついている、でも糖質を減らしているからエネルギー源になるのはタンパク質だけだ、タンパク質をいっぱい摂れば大丈夫、という説です。

しかし、わざわざ糖新生を介してグルコースを得るくらいなら、最初から糖質を摂ってりゃいいという話。

また別の記事では、甲状腺ホルモンがアミノ酸系ホルモンだからタンパク不足が原因だという主張。(20

これは少し考えればおかしいことが分かります。だってLowT3はT3の材料であるT4は足りているわけですから、材料不足が原因ではないわけです。

理由が何にせよ、私がGoogle先生に聞いた限りでは「高タンパク食でLowT3症候群が治った」という報告は出てきませんでしたので、もしこれで本当に完治されたのなら世界でもかなり稀な例であると言えます。

ホルモンを補充する?

LowT3症候群はT3が足りないんだからT3を補充すりゃいい、という主張が一部の医師の間でされているようです。

これまでの考察からも分かる通り、T3が足りない原因はT4から変換されないことですので、このやり方が対症療法にすぎないことは容易に想像できます。

仮に対症療法と割り切って適用したとしても、LowT3症候群にホルモン補充をするメリットの明確な証拠はないとする報告もありますので、あまり期待しない方がいいと思います。(21

まとめ

糖質制限によってLowT3症候群になってしまうメカニズムと解決法についてまとめました。

糖質を制限し過ぎることがLowT3のトリガーとなっていることは間違いなさそうです。

むしろ逆に、FT3の値を見れば普段どれくらい糖質を摂取しているのか分かるような気もします。それくらい関連してそうです。ビタミンミネラル不足がトリガーになることはそんなに多くありません。

あと、日本では血液検査で甲状腺ホルモンまでちゃんと測定してる人は少ないので、糖質制限をしている人の中でかなりの人が潜在的にLowT3症候群になってんじゃなかろうかと思います。

頼まないとやってくれないですし、頼んでもやってくれないこともあるようですし。

とにかく、糖質制限をやって異変を感じたら甲状腺の検査をやってみることをオススメします。

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Reference

[1] http://www.thyroidmanager.org/chapter/the-non-thyroidal-illness-syndrome/

[2] https://www.dietvsdisease.org/low-carb-hypothyroidism/

[3] https://hashimotoshealing.com/5-keys-improving-thyroid-hormone-conversion/

[4] https://www.huffingtonpost.com/john-berardi-phd/carbs-are-not-the-enemy-o_b_6406834.html

[5] https://blog.virtahealth.com/does-your-thyroid-need-dietary-carbohydrates/

[6] http://coconutsandkettlebells.com/low-or-high-carbohydrate/

[7] https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/99/4/99_713/_pdf

[8] https://ketodietapp.com/Blog/post/2018/02/18/are-keto-and-low-carb-suitable-for-people-with-thyroid-disease

[9] https://tomnikkola.com/about-low-thyroid-hypothyroidism/

[10] https://www.juliedaniluk.com/health-tips/a-ray-of-sunshine-for-your-thyroid.html

[11] http://rehabilizyoho.com/cate39/en666.html

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