マグネシウム不足が睡眠障害を引き起こす

国民健康・栄養調査によると、日本人の約20%が慢性的な不眠状態にあり、男性の37%、女性の43%が睡眠の質に満足していないと回答しています。

一方で、不眠症の疑いがある人で不眠症を自覚してない人は6割以上いるとも言われており、潜在的に睡眠障害を持っている人の数はさらに多い可能性があります。

現代人の不眠の原因の一つに、ストレスや生活習慣があげられます。

特にテレビやPC、スマートフォンが普及した現代では、睡眠の質を妨げる要因が増え続けています。

しかし、栄養面から睡眠障害について議論されることはそれほど多くはありません。

実は、必須ミネラルであるマグネシウムが睡眠の質の改善に大きな鍵を握っていることが分かっています。

様々な論文からマグネシウムの睡眠に対する効果について紹介します。

 

睡眠障害の種類

睡眠障害と一言で言っても、その種類は100種類くらいあるといわれており、人によって状態は様々です。ここではよく知られているものを取り上げてみます。

不眠症

不眠症には寝付くまでに時間がかかる入眠障害、夜中に目が覚めてしまう中途覚醒、早朝に目が覚めてそれ以降眠れなくなってしまう早朝覚醒、寝ても寝ても熟睡感が得られない熟眠覚醒の4つがあります。

過眠症

日中の眠気が強く、仕事に集中できない、起きていられない状態になることです。

概日リズム睡眠障害

いわゆる体内時計に狂いが生じることを起因とした睡眠障害で、身体的・精神的に異常が生じ日中の活動が困難になります。

睡眠障害が引き起こす問題

睡眠障害は単に日中の眠気を引き起こしたり、精神異常の要因となるだけでなく、様々なホルモンの乱れの原因となります。

睡眠不足は肥満の原因となる

睡眠時間が短い場合、肥満になる確率が大人では55%、子どもでは89%上昇するという報告があります。成人の場合、睡眠時間が一日一時間減少するとBMIが0.35増加するという結果もあります。(3)

ダイエットをしている場合、体重を減らす必要がある場合は、睡眠時間を確保することが重要だと言えます。

睡眠不足は過食を引き起こす原因となる

睡眠不足は、食欲に関連するホルモン、レプチンとグレリンに影響を与えることが分かっています。(4)

レプチンは脂肪細胞から放出される満腹ホルモンと呼ばれるホルモンで、脳に満腹を知らせるホルモンです。この機能が弱まると過食を引き起こすことが知られています。

一方、グレリンは飢餓ホルモンとよばれ、私たちに空腹を知らせるホルモンとして知られています。

睡眠不足は、レプチンの低下、グレリンの上昇を引き起こし、過食を引き起こす原因となることが示唆されています。

十分な睡眠は集中力と生産性向上に繋がる

十分な睡眠が日中の集中力に関連することは体感的にも理解できますが、エビデンスも多数存在します。

集中治療室における医師の夜勤を排除した結果、医療ミスが減ったという報告(5)、睡眠不足はアルコール依存症患者と同等かそれ以下のパフォーマンスレベルになるという報告(6)、子供の学習機能に影響を与えるという報告(7)があります。

十分な睡眠は運動能力とも関連する

睡眠は脳の機能だけでなく運動能力にも関連することが分かっています。

バスケットボール選手の研究では、睡眠の改善が、速度、正確さ、反応時間を有意に改善することが明らかになっています。(8)

十分な睡眠がグルコース代謝を改善し2型糖尿病リスクを下げる

ある研究では、長期間の睡眠不足の介入がグルコース代謝を変化させ、二型糖尿病のリスクを上昇させることを明らかにしています。(9)

また、その後二日間の十分な睡眠で、それらは改善することも分かっています。

別の研究では、睡眠時間を4時間から6時間に制限すると、耐糖能が悪化し境界型の兆候を示すようになったと報告しています。(10)

そしてこれらの兆候は、一週間の睡眠改善で解決したとのこと。

一般的に、睡眠障害と耐糖能異常に関する報告は多く、概して6時間以下の睡眠が耐糖能異常と関連するようです。(11, 12)

睡眠障害とうつ病

うつ病患者の90%が十分な睡眠がとれていないこと(13)、睡眠不足と自殺による死亡リスクとの関連(14)、不眠症や睡眠時無呼吸症候群を持つ人の方がうつ病の割合が高いこと(15)、などが報告されています。

睡眠不足がコミュ障を生む?

睡眠不足が続くと社会的なコミュニケーション能力が低下する可能性があることも分かっています。

ある研究では、睡眠不足が他人との感情の共感を低下させると報告しています(16)。

別の研究では、睡眠不足は他人の表情の認識能力を失う可能性があり、社会的なコミュニケーション能力を低下させる可能性があることを示唆しています(17)。

確かに言われてみると睡眠時間が短いことを自慢する人ってそんな気もします。

マグネシウムが睡眠障害を改善する

睡眠障害はどうやって引き起こされるのでしょうか?

その原因の一つに必須ミネラルであるマグネシウムの不足が示唆されています。マグネシウムは人体で4番目に多いミネラルで、エネルギー代謝やタンパク質合成など現在では約600以上の酵素反応に関与しているといわれています。(18)

睡眠とマグネシウムが関係あるといわれてもすぐにはイメージしにくいのですが、この二つには切っても切れない重要な関係があります。

つまりマグネシウム不足を改善すれば、不眠症をはじめとする睡眠障害が改善する可能性があります。

適正なマグネシウムが正常な睡眠を促す

あるマウスを用いた実験では、マグネシウムを適正な量に保つことが睡眠障害を予防することに繋がることを示しており(19)、逆にマグネシウム欠乏症を引き起こすと睡眠が浅くなり睡眠パターンが乱れてしまうことが示されています。(20)

高齢者を対象にした研究では、500mgのマグネシウムを投与するグループとプラセボのグループに分けて8週間の介入試験を行ったところ、マグネシウムを投与したグループの方が有意に睡眠の質が改善したと報告しています。(20) またマグネシウムを投与したグループでは、睡眠を調節するホルモンであるレニンメラトニンが高レベルになったことも分かっています。

これらの研究から、マグネシウムが睡眠の改善に重要な役割を担っていることが示唆されます。

マグネシウム不足がメラトニン不足を引き起こす

メラトニンは生物の概日リズムを調整する重要なホルモンの一つで、自然な眠りを誘導する働きがあるため睡眠ホルモンともよばれています。

一般的には、幼少期に最も多く分泌され歳を重ねるにつれて分泌量は少なくなっていきます。それに伴い睡眠時間も徐々に短くなっていきます。

実はこのメラトニンの合成にはマグネシウムが関与しています。メラトニン合成に必要なセロトニンN-アセチルトランスフェラーゼとよばれる酵素を活性化させることが分かっています。

マグネシウムを枯渇させたラットでは、血中のメラトニンが減少したり(21)、上で紹介した介入試験においてもマグネシウムの投与がメラトニン上昇と関連していることが分かっています。(20)

体内時計の維持にマグネシウムが関与していると報告している文献もあります。(22)

マグネシウムがストレスから心身を守りリラックスさせる

マグネシウムは単に睡眠の質を改善するだけでなく、ストレスを低下させたり、自律神経を安定させたり、身体と脳をリラックスさせる効果があることも分かっています。

自律神経を調節する

100人を対象とした90日間の介入試験では、400mgのマグネシウムを毎日補給したグループでは、自律神経の状態を示すHRVパラメータと副交感神経の指標となるpNN50が有意に増加したとのこと。(23)

自律神経の検査では心拍数の測定が行われます。

このうちHRV(Heart rate variability)パラメータとは心拍変動または心拍ゆらぎとよばれる値で、自律神経が正常に機能している場合は、呼吸や血圧の変化と同期したゆらぎが心拍間隔の揺らぎとして観察されます。

逆のような気もしますが、きちんと変動することが自律神経が整っていることを示しており、薬物によって自律神経を抑制したり、自律神経に異常があったりする場合には心拍のゆらぎが消失します。(24)

一方のpNN50(NN50)とは、50ミリ秒以上の心拍間隔(心臓がドクンドクンとなる間隔)が一日の中で何%現れるのかを表す数値です。これが多ければ多いほど副交感神経が優位になっている時間が長いことを示します。(25)

上の試験ではマグネシウム摂取が自律神経を整え、副交感神経を活性化させる(リラックスさせる)効果があることを示しています。

HPA軸を調節する

ヒトがストレスを受けると、主に二つの反応によってストレスに対応しますが、その一つが視床下部-下垂体-副腎系(hypothalamic-pituitary-adrenal axis:HPA軸)を経由するホルモン分泌です。

この系統が乱れるとストレスに対応できにくくなり、うつ病になったり、睡眠障害を引き起こしたり、ストレス系ホルモン分泌が異常に亢進することによって免疫力が低下しガンになったりします。

マグネシウムにはHPA軸を調整する機能があり、食餌性の低マグネシウム血漿がHPA軸の調整不全と対応することがマウスの実験から明らかになっています。(26)

腸内細菌叢を変化させ不安行動を防ぐ

あるマウスの実験では、マグネシウム欠乏のマウスでは腸内細菌叢が変化し不安行動を現し始めたことが明らかになっています。(27)

 

どんな人がマグネシウム不足になりやすいのか?

現代人の多くがマグネシウム不足だといわれていますが、特に以下の項目に当てはまる場合はマグネシウム不足のリスクがより高くなっている可能性があります。(28)

消化器疾患

クローン病やグルテン過敏症、腸炎、慢性的な下痢、脂肪吸収不良の人は時間の経過とともにマグネシウムの枯渇を引き起こす可能性がある。

糖尿病患者

インスリン抵抗性と尿中マグネシウムの量が関連しているといわれている。腎臓でグルコース濃度が高くなるとマグネシウムの排出量も多くなる。

アルコール依存症

依存症でなくてもアルコールをよく飲む人はマグネシウム不足を引き起こしやすい。

高齢者

年齢とともに小腸からのマグネシウムの吸収が減少し、腎臓からのマグネシウム排出量も多くなるため、高齢者ではマグネシウム不足になる確率が高い。

ビタミンDサプリメント

ビタミンDの代謝にはマグネシウムが必要であり、サプリメントなどによって大量のビタミンDを摂取するとMgの枯渇を誘発する可能性がある。(29)

カルシウムサプリメント

カルシウムはマグネシウムと拮抗するミネラルであり、カルシウム過多の状態ではマグネシウムが欠乏する。実際のところカルシウムサプリメントはマグネシウムの欠乏を引き起こすが、マグネシウム補給はカルシウムの使用を促進する。(30)

牛乳

カルシウムサプリメントと同じ理由で拮抗するカルシウムが多すぎるためマグネシウム欠乏に陥りやすい。

炭酸飲料水

炭酸飲料水に含まれるリン酸塩はマグネシウムと結合し、体内でマグネシウムが利用できなくなる。

瞼の痙攣、こむら返り

筋肉の硬直や痙攣はマグネシウム不足の兆候。

断糖肉食

一般に食肉に含まれるマグネシウム量は非常に少ないため、野菜や穀物を除く食事法ではマグネシウムが欠乏しやすい。(31)

マグネシウムの多い食品

マグネシウムを多く含む食品には以下のものがあります。マグネシウム不足が考えられる場合はこれらの食品を積極的に摂ることをお勧めします。(ここではカルシウムの比率が少ない物のみを紹介します)

  • チョコレート
  • アボカド
  • パンプキンシード
  • ナッツ類(カシューナッツ、アーモンドなど)
  • 豆類(レンズ豆、大豆、ひよこ豆など)
  • 未精製穀物(玄米、全粒粉)
  • バナナ
  • 葉野菜(ほうれん草、ケールなど)
  • 海藻類(あおさ、ワカメ、昆布、海苔など)
  • きくらげ

普段の料理で自然にマグネシウムを増やすには「ちょい足し」がお勧めです。

 

その他のマグネシウム摂取法

サプリメントや経皮からのマグネシウム吸収に使える商品を紹介します。(画像クリックでiHerbサイトに移動します)

Thorne Research, マグネシウム シトラメート(Magnesium Citramate)

クエン酸とリンゴ酸キレートのマグネシウムサプリメントです。

Doctor’s Best, 高吸収マグネシウム、120錠

恐らくiHerbで一番人気。200mgで高容量です。粒が大きいのが難点。

エプソムソルト

マグネシウムは経皮からも吸収することが知られています。お風呂に入れてマグネシウム吸収を促進します。

Life Flo Health, ピュア マグネシウム オイル

足が攣ったりするときに塗ると効果があります。肌に合わない人もいるようです(私は若干かゆくなる)。

 

最後に

マグネシウムと睡眠および自律神経の関係について調べました。

私自身、睡眠の質が徐々に悪くなってきていると感じていたため(中途覚醒、早朝覚醒など)、いろいろ調べながら改善を試みてきた結果、マグネシウム不足にたどり着きました。マグネシウムをしっかり摂るようになってようやく改善してきたように思います。

睡眠障害で悩んでいる方、自律神経の乱れを正したい方のきっかけになれば幸いです。

 

Reference(website)

https://www.healthline.com/nutrition/10-reasons-why-good-sleep-is-important#section11

https://www.thecut.com/2017/02/is-taking-magnesium-for-sleep-a-good-idea.html

http://mindfulness.jp/utubyou/42-stress.htm

https://www.healthline.com/nutrition/magnesium-and-sleep#section3

http://www.ancient-minerals.com/magnesium-deficiency/need-more/

https://ods.od.nih.gov/factsheets/Magnesium-HealthProfessional/

https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/mineral-mg.html

https://www.healthline.com/nutrition/10-foods-high-in-magnesium#section4

https://www.healthline.com/health/food-nutrition/magnesium-overdose-whats-the-likelihood#modal-close

https://www.physiology.org/doi/pdf/10.1152/ajpregu.2000.279.6.r2173

http://www.eiyoukeisan.com/calorie/nut_list/magnesium.html

http://www.seikatsusyukanbyo.com/statistics/disease/dyssomnia/