我が家が子どもの糖質制限を止めた理由ー息子の身長が止まった

糖質制限の是非を巡って大きな論争が起こっています。

このブログでもこれまで糖質制限を基本として様々な情報を発信してきましたが、そのような情報発信は全て終わりにします。間違った情報を発信してきた可能性がどうしても否定できなくなってきたからです。

自分にとっても家族にとっても大きな転換だったので、これから何をどうやって発信していこうかこの一カ月は少し悩んでいました。

2年前にひょんなことから糖質制限という食事法を知りました。

それから糖質制限に関連する本を読み漁り、Kindleで買えない本は日本からわざわざ取り寄せたりしながら、糖質制限こそが人間本来の食事であると信じて家族で取り組んできました。

糖質は本来必要ない栄養素。糖質こそが全ての疾患の原因。700万年の人類史で糖を摂り始めたのはわずか1万年。人の体はまだ糖に適応できてない。世界中の先住民族だってそうやって長い間滅亡せずに存続してきた。だからこそ糖を断ち切り脂肪をエネルギー源として生きていくことが人類本来の食性だ。

そう確信していました。

最初は食事の効果をとても感じました。朝は起きれるし、一日中頭が冴えてる感じがしました。しかし、徐々に異変を感じるようにもなってきました。

最初に異変を感じたのは、自分ではなく子ども達でした。そしてそれは徐々に不安へと変わり、やがて確信へと変わりました。

私が根本的に間違っていたのは、「糖質は不要」だと考えていたこと。

「もしかして糖質は必要?」と考えた時、これまでうまくいかなかったいろんな出来事が納得いくようになってしまいました。

今私は個人差はあれど、子どもも大人も糖質は必要な栄養素だと考えています。ただし自分の体感でそう思っているわけではありません。そう考えないとこれまで起こったことが解釈できないだけです。自分の体感に自信がないので頭に頼ってます。

頭でっかちとかなんと言われようが、私は高血糖になっている自分さえ体感で把握することは出来ません(笑)

私たち夫婦が糖質制限で感じた子ども達の異変など、これから数回に分けて少しずつ紹介しながら、考察したことをまとめてみたいと思います。

まずは息子の身長についてです。

またこれらの話は全て我が家で起こったことであり、すべての人に当てはまるものではありません。その辺を考慮しながら読んでいただければと思います。

sponsored link

息子の身長が伸びなくなった

子どもたちの食事をいわゆる糖質制限で作るようになって最初に感じた異変は、息子の身長が伸びなくなったことでした。

息子は小さい頃から背が高く幼稚園のクラスでも大きい方でした。糖質制限を始める前は1年で7-8cm伸びていましたが、糖質制限をした年は一年でたった4cmしか伸びませんでした(この年代では平均で6cm伸びると言われています)。

平均が6㎝で実際が4㎝ならまあそんなに騒ぐほどのものではないと思われるかもしれませんが、その4㎝も最初の半年間に伸びたものであり、夏以降はほぼ停滞していました。

また、糖質制限をしていたといっても、幼稚園での給食で出てくるお米は食べていたので、一日一食は炭水化物を食べるスタンダード糖質制限という範囲になります。

朝と夜は高タンパク高脂質食を意識していました。野菜に含まれる糖質は極度には気にしていませんでしたが、サツマイモや人参ジャガイモなどの根菜や果物などは極力避けていました。もちろんお菓子やジュース類は一切与えず。詳細は私の過去のインスタグラムの写真を見てもらえればと思います。

これが2016年1月からのことです。

なぜ、息子の身長が停滞してしまったのか、その要因をいろいろ考察してみました。

ケトン食の副作用

一般的に糖質制限はさらに厳格にすると、ケトン食と呼ばれる療養食に近づいていきます(ただし、ケトン食にはタンパク質量の制限もあるので厳密には異なる)。ケトン食はてんかん患者やGLUT1欠乏症の患者、がん患者に用いられる食事法として知られています。

一方で子ども達におけるケトン食には低身長、腎臓結石、骨折などの副作用があることも知られています。

身長の件については、たがしゅう先生もブログで言及されています。

ケトン食を開始すると成長ホルモンによって産生されるIGF(Insulin-like growth factrors:インスリン様成長因子)の値が一時的に低下しやすいことが報告されているそうです。ケトン食を継続しているとこの濃度は戻ってくるようですが、それでも身長が伸びなくなってくるのは、インスリンが関連しているとたがしゅう先生は考えられているようです。

つまり、糖質を極度に控えることによって同化作用の強いインスリンの分泌も抑えられることが成長抑制に影響を与えると考察されています。

しかし、たがしゅう先生自身が実験されているように、糖質を摂らなくてもタンパク質だけでもインスリンは分泌されることが分かっています。

そうすると、「インスリン不足」だけではケトン食の成長遅延の説明は難しくなります。

骨の成長にはグルコースが必要

2015年の雑誌Cellに投稿された研究によると、骨の形成、代謝にはグルコースが必要であると報告しています。

骨も筋肉同様に同化(合成)と異化(破壊)を繰り返しながら新陳代謝を繰り返しており、人間の骨では5‐10年ですべて入れ替わることが知られています。

このうち骨の同化には骨芽細胞と呼ばれる細胞が関与しており、これが骨の形成を行うと同時にオテステオカルシンという糖代謝を制御するホルモンを分泌することが知られています。すなわち骨が全身の糖代謝を制御しているとも言えます。

しかし、なぜ骨が糖代謝を制御するのかについては、これまで分かっていませんでした。

このことについてマウスを使って実験を行ったところ、まず、骨芽細胞自身が主なエネルギー源としてグルコースを細胞内に取り込んでいることを突き止めました。そしてさらに研究をすすめると、グルコースを取り込むために必要な遺伝子Runx2の発現のタイミングから、骨芽細胞の分化(新たな骨芽細胞が作られること)にグルコースが必要であることが分かりました。

グルコースを骨芽細胞に取り込めないように遺伝子操作したマウスでは、通常のマウスよりも骨が形成されず、さらには全身の糖代謝を制御するオステオカルシンの血中濃度も低くなっていることが分かったそうです。

つまり、骨がきちんとグルコースを取り込むことが、全身の糖代謝にも影響を与えているということが分かったのだそうです。

まとめると、

  1. 骨の成長は骨芽細胞が制御している
  2. 骨芽細胞の分化にはグルコースが必要
  3. 骨芽細胞が分化しないときは骨が形成されない
  4. 骨がグルコースを取り込むことが全身の糖代謝に影響を与える

ということになります。

この論文の最後では、ケトン食の食餌療法を受けている子ども達の身長が伸びなくなる事例を説明する理由にもなる、とまとめています。

またこの結論は、大人においても骨の新陳代謝にはグルコースが必要であると言うことができます。

我が家で感じたこと

骨の形成にはグルコースが必要。

これが真実だとすると、骨が成長する子ども達においてどれくらいの糖質量を摂取すると十分だと言えるのか、糖新生でも十分に足りる量なのかという問題がでてきます。脳の場合は、グルコースがなくてもケトン体がある。しかし、骨芽細胞はケトン体を使用することができません。

結論から言えば、私の長男では一日一食の給食で出てくるご飯では足りなかったのだろうということになります。

ただこれは個人差が大きいとも考えられます。

同じ食事をしていた当時3歳の娘は、一年で10cm近く伸びています。娘にはお昼のご飯だけでも骨の成長に十分なグルコースが確保できたと考えることができます。

息子のLowT3

しかし、私たち夫婦が実際に感じたのは、息子のLowT3と思われる症状(食欲不振、抜け毛、便秘、無汗症など)でした。

生まれてこのかた一度も食欲不振に陥ったことなかった息子が、出されたものを残したときは本当にびっくりしました。2016年7月のことでした。

「ミトコンドリアまでうまく回ってなかったのか?」

ならば脂肪でしっかり回るようになればこれらも改善するはずだと考え、ビタミンやミネラルを増やし、さらにはサプリメントまで与えながら様子をみたりしてみました。

しかし、結局は糖質量を増やすことでしかこれらの症状を解決することはできませんでした。

全然汗をかかなくなっていた息子が、寝汗をかいているのを見た時、妙にホッとしたのを覚えています(拭きませんでした(笑))。

そもそも子どもは解糖系だけ?

そもそも子どもを脂質代謝で維持させること自体が無理だという説もあります。

安保徹先生の「エネルギー生成系で知る病気の成り立ち」には次のようなことが書かれています。

子ども時代は、解糖系が優位ですが、大人になるにつれ、1対1に調和していきます。60代から70代のお年寄りになると、解糖系が縮小しミトコンドリア系が拡大し、最期を迎えるのです。

細胞のエネルギー産生には、嫌気性代謝の解糖系好気性代謝のミトコンドリア系があります。

一般的に糖質制限では、解糖系に頼らずミトコンドリア系を駆使して効率よくエネルギー産生を行うことを目標として脂肪を多く摂ることが推奨されますが、実は解糖系で作られるエネルギーが必要な場合も存在します。

その一つが細胞分裂です。

細胞分裂が盛んな子ども時代においては、解糖系によるエネルギー供給が必要であり、その分の糖質をしっかりと摂取することが必要だとも考えられます。

息子にどんなに脂肪を増やしてもLowT3の症状が消えなかったのは、このような背景があった可能性もあります。

糖質制限をしているイヌイットはどうなのか?

糖質が必要だというと、じゃあ糖質制限をしているイヌイットはなぜ健康なんだ?と言う人が出てきます。

しかし実際はイヌイットもかなりの糖質を摂っています。

W.A.Price博士の食生活の身体の退化にも次のように書かれています。

自給自足状態にあるイヌイットの食生活に登場してくるものには、カリブー(トナカイの一種)の肉、小ねずみが集めてきて隠し場所に貯めている落花生、シーズン中に採集し越冬用に貯めてあるケルプ(大きな海藻類)、冷凍にして保存してあるツルコケモモの実(小さくて水分を多く含む果実)、アザラシの油に漬けた果実花やスイバの草、それに大量の冷凍魚類がある。

W.A.PRICE著 『食生活と身体の退化』

落花生はピーナッツで100gあたり16g、ケルプは昆布のようなもので100gあたり10g、ツルコケモモの実とはいわゆるクランベリーで100gあたり12gの糖質を含んでいます。

また、グリーンランドに住むイヌイットの2014年の遺伝子調査によれば、脂質代謝に必要な遺伝子CPT1Aに変異があり、その活性に常にネガティブフィードバックが掛かっている状態になっていることが明らかになっています。

これは非常に不思議な結果でもあります。

なぜなら、イヌイットは生きていく環境から脂肪を中心とした食事を余儀なくされているはずなのに、脂肪代謝が苦手になるような遺伝子変異が起こってしまっているからです。

この自然選択についてはいろんな解釈ができると思いますが、自然は脂肪食で生きていくイヌイットに、ケトアシドーシスという危険な状態に陥りるリスクを減らすために、このような遺伝子変異をもたらしたと考えられています。

言い変えれば「イヌイットこそが人類が糖質制限でも生きていける証拠」どころか、「脂肪を中心とした食事のイヌイットでさえケトン体や脂肪酸だけに頼らないような遺伝子を持っている」という方が正しいことになります。

私にはこの自然選択が

自然は人間がケトン体をメインエンジンとして使用することを危険だと判断した

と思えてしまいます。

また少し話は変わりますが、2015年にScienceに投稿された報告によれば、グリーンランドイヌイットの遺伝子を調査した結果、体内の不飽和脂肪酸のレベルを決定する酵素FADS1、FADS2およびFADS3に変異が起きていることが明らかになっています。

これまでは、イヌイットが高い血中EPA/AA(オメガ3とオメガ6の比)を持っているのは、オメガ3を多く食べる食餌によるものだと思われていました。

しかしこの結果からイヌイットの遺伝的な保護作用により体内で調整されていると考えらています。

イヌイットの血中オメガ3濃度をみて、私たち都市部の人間が心疾患予防を期待してイヌイットと同じようにオメガ3を食べたとしても同じような効果が得られる可能性は少ないと作者は述べています。

先住民族の食事や生き方は、人間が本来どのような姿で生きてきたのかを示してくれます。しかし多くの先住民にはその土地や食性に適応した遺伝子変異を持っています。

アメリカ人と日本人のインスリン分泌でさえ異なるように、先住民の食生活が日本人にそのまま取り入れられるものではないことは理解しておく必要があるのではないかと思います。

アーミッシュの遺伝子変異

最後に

子ども達には約1年ほど糖質制限の食事を行ってきました。

確かに風邪をひきにくくなったり、感情の起伏が起こりにくくなったり、幼稚園の成績が良くなったり、良かったと思えることも多々ありました。

しかし、それは単にそれまでのタンパク不足が解消されたり、血糖値の変動が少なかったりした為で、相対的に他の栄養素が満たされただけだったと今は考えています。糖質が何か悪さをしていたわけではない。

マクロビをやっていた我が家にとって、タンパク質や脂肪を多く摂るようになった食事は一時的に奏功しましたが、それを継続してしまったことによって様々な問題が発生してしまったように思います。

糖質制限系の本にはこのようなことが必ず書かれています。

  • 必須アミノ酸はあるが、必須糖質はない。
  • 糖質は身体の構成要素にはならない。
  • 身体に必要な糖質は糖新生で十分。

本当にそうでしょうか??

ここに疑問をもったことから、いろんなことが見えてくるようになりました。

糖質制限やケトン食による成長遅延の事例については、実はかなり初期のころからたがしゅう先生のブログで把握していました。だから身長だけは注意深く観察していました。

当初はたがしゅう先生が仰るように、インスリンの使い方に体が慣れてくれば問題はなくなるだろうと期待していました。なぜなら先住民族にはイヌイットのように糖質制限をしている健康な民族が存在しているから、と考えていたからです(ちなみにイヌイットもヨーロッパ人に比べると小さいそうです)。

しかし、息子の場合はそうはなりませんでした。

FacebookやインスタグラムなどのSNS、ブログなどでも、糖質制限やMEC食で育児や離乳食を行っている人も増えてきているようです。そして子ども達に良好な変化が現れたと書かれている記事を目にすることが多くなってきました。

私も当初はそのような記事をたくさん書いてきました。

しかし今は、子どもには絶対に必要な糖質量があって、タンパク質脂質ビタミンミネラル同様に摂取しなければならない大事な栄養素であると考えています。

単に糖質が悪だからといってゼロに近づけることが良いと考えるのではなく、子どもの様子を見ながら適切な量を把握することが大事なのだろうと一年の失敗を通して強く思っていることです。

また、この話は単に子どもの糖質制限=背が伸びない、危険だという主張をしたいわけではありません。確かに同じような経験をされている方を何人か知っていますが、息子と同じような食事をした3歳の娘は、高タンパク食のおかげか1年で約10cmも身長が伸びています。

この違いは、子どもには甲状腺ホルモン主導で成長するタイプと成長ホルモン主導で成長するタイプの2タイプが存在するのではないかと私は考えています。

甲状腺ホルモンタイプはエネルギー不足にならないようにする必要があり、糖質制限をやりすぎてはいけないタイプです。

成長ホルモンタイプは高タンパク食で育つので、ある程度の糖質制限でも成長するタイプだと思います。ただし、こっちはこっちで別の問題が発生していますので、それはまた別の機会に報告します。

糖質制限で塾を運営されている三島学先生の塾でも、子ども達の成長に問題はなかったと仰ってますので、子どもの年代によっても変わる可能性もあると思ってます。たまたまいろんな事情が重なり、うちの息子には一日一回のご飯では全然足りてなかった、というだけの話です。

ただもしかすると同じような経験をして、糖質を避けながら悩んでいるお母さんもいるかもしれないので、そのような方には糖質は悪者ではない子どもの体には必要な場合も多々あるということをお伝えしたいと思います。

我が家が子供たちの糖質制限を完全に解除して約9か月が経ちます。現在は三食とも炭水化物を食べています。白米も玄米も雑穀米もいろいろ食べてます。砂糖や甘味料は使っていませんが、果物はほぼ毎日食べています。穀物やサツマイモなどの根菜でできたおやつも時々与えてます。週末は有機農小麦で作った自家製の全粒粉パンも食べてます。

紆余曲折を経て、今子ども達の食事で気を使っていることは、自然な食材と栄養のちょい足し、そして発酵食品です。除去しているのは砂糖と市販の小麦粉、オリーブオイル以外の植物油、そして一般的なお菓子を含む加工食品を極力。

息子はこの9か月で5cmほど背が伸び、現在6歳2か月で125.5cmになりました。まだ本調子という感じではないですが、今年はまだまだ伸びそうです。

また、昨年夏はLowT3の影響ですっかり髪の毛が薄くなってしまっていましたが、ようやくフサフサに戻りました。毎朝排便もあり(臭いは良くないが)、今年の夏は汗だくになって遊びました。

何よりも、食卓に笑顔が戻ったことが一番良かったなと思っています。

昨年は辛そうでした(笑)

よく食べよく遊びよく笑い、そしてよく泣き、、正直言って以前のような情緒安定型では全くなくなりましたが、次の課題は血糖コントロールと糖代謝だと考え、また振出しに戻って地道に取り組んでいこうと考えています。

またいつか全部間違ってました!!となるかもしれませんが、これからも気長にお付き合いいただければと思います。

sponsored link