甘味刺激による脳相からのインスリン分泌

甘味刺激による脳相からのインスリン分泌

食べ物を見たり、匂いをかいだり、あるいは口の中に入ってきたりするような刺激によって、唾液、胃酸、膵液、胆汁が分泌され始める現象があります。

これを脳相といいます。

脳相は胃酸のような消化液だけでなく、インスリン分泌においても起こることが分かっています。

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胃酸の分泌機序

インスリンの脳相について考える前に、胃酸が分泌される機序についてまとめます。

脳相

食物を見たり、匂いを感じたり、調理の音を聞いたり、あるいは味を想像したりすると、大脳を通して脳幹から迷走神経が刺激されて塩酸とエプシノーゲンの分泌が始まります。

これを脳相といいます。

胃酸分泌の約15%が脳相によって起こります。これから来るであろう食物に対し胃が消化の準備を始める段階だと言えます。

またこのとき胃酸分泌を誘起するガストリンというホルモンも分泌され、ペプシノーゲン分泌亢進、胃運動の亢進を促進します。

胃相

食物が実際に胃に入ってくると、物理的な刺激が胃液分泌をさらに促します。

この状態を胃相といいます。

胃酸分泌の80%が胃相によって起こります。

腸相

さらに食物が十二指腸まで到達すると、十二指腸壁のS細胞からセクレチンとよばれる消化管ホルモンが分泌され、胃液の分泌は抑制状態に入ります。

これを腸相といいます。

胃酸はこのように、脳相→胃相→腸相という機序によって分泌が制御されています。


 

脳相によるインスリン分泌

2008年に報告されたドイツのロストック大学で行われた研究によると、健康な人を対象にした脳相によるインスリン分泌(CPIR)の実験では、甘味料を口に含むだけでインスリン分泌が有意に増加したことを明らかにしています。

実験方法

絶食させた健康な被験者に下記8つの味溶液を口に含み、飲み込まずに吐き出させ、口の中を洗い流しました。

  • スクロース(甘味)
  • サッカリン(甘味)
  • 酢酸(酸味)
  • 塩化ナトリウム(塩)
  • 塩酸キニン(苦味)
  • 蒸留水
  • デンプン
  • グルタミン酸ナトリウム(旨味)

実験はそれぞれ別の日に行われ、味溶液もランダムに適応されました。

結果

最初に行われた予備実験の結果がこちらです。

上から、スクロース、デンプン、塩酸キニン、蒸留水、グルタミン酸ナトリウム、塩、サッカリンで、実験前、口に含んでから3分後、4分後、7分後、10分後の血中グルコースとインスリン分泌量が示されています。

血中グルコースはどの味溶液においても上昇は見られませんが、5分後のインスリンについてはスクロース、デンプン、塩酸キニン、蒸留水、サッカリンで上昇が確認できます。このうち、デンプン、塩酸キニン、蒸留水は外れ値による上昇だとされています。

候補として残ったスクロースとサッカリンの追加実験を20人の被験者に対して行うと、下記のグラフのように有意にCPIRが起こっていることが分かります。

代替甘味料の脳相によるインスリン分泌

考察

この実験では、スクロースとサッカリンを口に含むだけで5分後にインスリンの分泌が起こることが示唆されています。一方、血糖値の上昇はありませんでした。

過去の同様の実験では、健常者においてはCPIRはなかっとされる報告もありますが(参照)、実験前に絶食状態にあったことが、結果に反映できたのではないかと考察しています。

甘味、苦味、塩味、酸味、旨み、無味のうち、CPIRを有意に引き起こすのは甘味であるとまとめられています。

 

テレビ好きは糖尿病になりやすい?

昨今のテレビは、視聴率確保のためかグルメ番組で溢れています。

脳相のメカニズムから考えると、食べ物の映像を見たりよだれを出したり、美味しそうだなあと思うだけで、胃酸などの消化酵素の分泌が始まります。

ここに面白いデータがあります。

2002年にアメリカで行われた調査によると、毎日のテレビ視聴時間が1時間増えるごとに、糖尿病の発症リスクは3.4%上昇すると報告されています。

この報告では、テレビを座ったまま過ごすことが慢性的な運動不足を招き、それが糖尿病発症の確率を高めたのではないかと考察しています。

しかし、運動不足と肥満(糖尿病)は本質的には相関がないことが、Obesity Codeには書かれています。

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もし毎日毎日テレビから流されてくるグルメ番組によって、脳相からのインスリン分泌が引き起こされていると考えると、テレビを見ているだけでインスリン抵抗性になってしまう可能性もあるのかもしれません。

(テレビを見ながら何かを食べ続けているからという可能性が最も高いですが…)

 

嗅覚がなくなると痩せる?

もう一つ、嗅覚に関する面白い研究があります。

マウスを用いた実験ですが、通常のマウスに高脂肪の餌を与えると体重が2倍に増加したのに対し、嗅覚を欠損させたマウスではわずか10%の増加だったという報告があります。

また一度肥満になったマウスの嗅覚を取り除くと、すぐに痩せたとのこと。

つまり、嗅覚を失うと食べたものはエネルギーとして使用され、嗅覚が残っていると食べ物は蓄積される傾向にあると結論付けられています。

この論文では、脳がエネルギーのバランスをどのように認識するのか、どのように調整するのかに対して嗅覚が一つのセンサーになっている可能性があると考察しています。

嗅覚欠損マウスの実験
上が通常マウス、下が嗅覚欠損マウス。どちらも同じ量の高脂肪食を食べたが嗅覚欠損マウスでは肥満にならなかった。

また、通常マウスでは高脂肪食によってインスリン抵抗性が高まり、脂肪の蓄積が促進した一方、嗅覚欠損マウスではインスリン抵抗性が下がり、脂肪燃焼が促進したとされています。

嗅覚欠損マウスではインスリン抵抗性が下がる

これは脳相とは関係ないのか?

あくまで想像ですが、マウスが嗅覚を失うことによって同時に脳相を失い、インスリン分泌の機序に乱れが生じ、インスリン分泌量が極端に減ってしまったとは考えられないでしょうか。

その結果、マウスのインスリン抵抗性改善や脂肪燃焼が促進したのではないかとこの実験結果を見ると考えてしまいます。

ちなみにマウスを用いた脳相の実験では、グルコースに関してのみCPIRが報告されています。

 

まとめ

糖質制限が流行している昨今の日本では、血糖値を上げないという謳い文句の元、代替甘味料も同様に流行しています。

代替甘味料は血糖値は上げませんが、インスリンは分泌されます。

更にこのような代替甘味料でさえ、口に含んだ瞬間、あるいは脳が「甘い」と感じた瞬間に、インスリン分泌を引き起こしている可能性は高いと言えそうです。

また、脳相というと胃酸などの消化酵素については知られていましたが、インスリンの機序についてはまだまだ分からないことも多いような気がします。

いろんな実験を見てみると、もしかすると甘味料以外でも脳相によるインスリン分泌は起こっているのではないかと想像しています。

目に入ってくる刺激、鼻に入ってくる刺激など五感から伝わる刺激だけでなく、例えば四六時中食べ物のことばかり考えているだけで、太りやすくなったり痩せにくかったりすることもあるのではないかと考えています。

 

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Reference




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