食事法の「合う合わないは人それぞれ」は何で決まるのか?

食事法の「合う合わないは人それぞれ」は何で決まるのか?

糖質制限で痩せる人もいれば、全く痩せない人もいる。脂質制限で痩せる人もいれば、高脂肪食で痩せる人もいる。

MEC食が合う人もいれば、プラントベースホールフードが合う人もいる。高タンパク食が合う人もいれば、ファステイングが合う人もいる。

様々な食事法が提案されている昨今、自分に合う食事法を見つけることは、ますます容易なことではなくなってきているように感じます。

今や食事指導の専門家達でさえ「合う合わないは人それぞれ」「万人に合う食事法はない」という結論ありきで話をされることが多くなってきているように思います。

実際のところ何が違って「人それぞれ」は生じてくるのでしょう?

その要因の一つを示していそうな論文を紹介したいと思います。

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インスリン抵抗性を持つ人とそうでない人で食事法の効果はどう変わるのか?

コロラド医科大学のグループの研究。

インスリン抵抗性を持つ人とそうでない人がそれぞれ高炭水化物食でダイエットをした場合と低炭水化物食でダイエットをした場合に、身体測定データや代謝プロファイルにどのような変化が現れるのか、16週間にわたって調査しました。[1]

参加者は23歳から53歳のBMI:30-35で肥満の健康な女性21人(どうでもいいが、この表現にどうしてもなじめない(笑))。

このうち、空腹時インスリンレベルが10 μU/mL (N = 12)以下の人たちをIS(インスリン感受性)グループ、空腹時インスリンレベルが15 μU/mL (N = 9)以上の人たちをIR(インスリン抵抗性)グループとしました。

そしてさらに両グループを二つに分け、一方をHC/LF(P:F:C=20:20:60)、もう一方をLC/HF(P:F:C=20:40:40)の低カロリー食をさせました。カロリーは各自のエネルギー消費量を測定し、そこから400kcalを引いた分が設定されました。

被験者らの身体データは以下の通り。

真ん中あたりにある、HOMA, QUICKI, Siがインスリン抵抗性やインスリン感受性に関する定量値。[2, 3, 4]

HOMAはHOMA-Rのことだと思われます。数字が大きいほどインスリン抵抗性が高いことを示します。QUICKIは量的インスリン感受性検査指数(quantitative insulin sensitivity check index)と呼ばれる値で、0.3未満で明らかにインスリン抵抗性と判断されます。

空腹時インスリンレベルと空腹時血糖値が分かれば、これらはウェブサイト上で値を出すことができます。

Siはよくわかりませんが、インスリン感受性を表しているようです。数字が大きいほどインスリン感受性が良いと判断してよさそうです。

インスリン、インスリン抵抗性・感受性に関する値以外は大きなばらつきはありません。

Body Fat(%)はさすがアメリカといったところ。

16週間後の介入試験後の結果

さて、さっそく結果を見てみます。

16週間後の体重の結果がこちら。

Aは体重の減少量、Bは元の体重から減少した体重の割合を表します。

グラフを見ると分かる通り、全ての参加者の体重が減少しました。

しかし、インスリン感受性(SI)のグループではHCLFグループが体重を落としたのに対し、インスリン抵抗性のグループ(IR)ではLCHFグループが体重を効果的に落としたことが分かります。

カロリー収支から計算される体重減少は6.1kgと予想されましたが、SIグループのHCLFグループとIRグループのLCHFグループは予想の2倍の体重を落としたことになります。

一方、SIグループのLCHFグループはHCLFグループの半分程度、逆にIRグループのHCLFグループはLCHGグループの4分の3程度の減少量にとどまりました。

同じ食事法でも完全に逆の結果。

つまり、出発段階のインスリンレベルの違いが食事法の効果にも影響を与えている可能性が高いということになります。

その他代謝に関するデータはこちら。

空腹時インスリンレベルは全てのグループで減少していることが分かります。

考察

この研究の問題点として、著者らは以下の点を挙げています。

  1. 参加者が21人と少なかったこと
  2. 実際に参加者が摂った食事は全て家庭で提供されたものなので指定されたカロリーを順守しなかった可能性が残ること(しかし予想される体重減少を達成しているので可能性は少ない)
  3. 活動量や摂食性の熱産生を考慮していないこと

確かに各グループに5,6人しかいなかったことは少し気になります。

また、個人的には16週間後のHOMA-Rや筋肉量・脂肪量の減少量などの情報もあると良かったと思うのですが、その点は不明。

が、インスリン感受性の人たちが脂肪を控えることで体重減少に成功し、インスリン抵抗性の人たちが炭水化物を控えることで体重減少に成功したこと、また逆の場合は体重の減少量が緩やかだったことは、個々に食事法を設定する際の「人それぞれ」を考慮する一つの根拠となり得る論文だと思われます。

まとめ

体重を効果的に落とすには、インスリン感受性の人たち(空腹時インスリンが10μU/ mL以下の人)で体重を落としたい場合はHCLFな食事が望ましく、インスリン抵抗性の人たち(空腹時インスリンが15μU/ mL以上の血症の人)はLCHFな食事が望ましい。

ちなみにLCHFに関して、著者らは次のように述べています。

The short‐term changes seen in this study have not been demonstrated to be durable over longer periods of time as seen in longer term studies lasting up to a year.

今回の研究で見られたような短期間での変化は、1年まで続く長期間の研究でも見られるように[5]、長期にわたって持続するかどうかは証明されていない。

同じ体重減少でも脂肪が落ちたのか筋肉が落ちてしまったのかが分からないのですが、もし両LCHFグループの筋肉減少量がHCLFより多かったとすると、長期的にはインスリン感受性は落ちてくる可能性があります。その場合は、単に体重減少だけで見るべきではなく、IRグループにおいてもHCLFが選択される可能性も出てきます。

しかし、まあそんな細かい話は置いといて、このブログ記事のそもそもの主題であった「食事法は人それぞれ異なる」という要因の一つにインスリン抵抗性・感受性(つまりは耐糖能)が絡んでいることは十分にあり得ると言えるのではないでしょうか。

参考までにいつものやつを貼っておきます。

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Reference

[1]https://onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.1038/oby.2005.79
[2]https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%83%AA%E3%83%B3%E6%8A%B5%E6%8A%97%E6%80%A7
[3]https://www.physiology.org/doi/abs/10.1152/ajpendo.1979.237.3.E214
[4]https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/8070611?dopt=Abstract
[5]https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa022207

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