ファスティング中の運動は筋肉を破壊するのか?

ファスティング中の運動は筋肉を破壊するのか?

ボディビルダーやボディメイクをしている人たちが一番嫌がるのはカタボること。

カタボるとはカタボリック(異化)を日本語の動詞化した言葉で、つまりは筋肉の異化が進行してしまうことを言います。

カタボるのを防ぐには、きちんとエネルギー源を蓄えたうえでトレーニングを行うことが正しいと言われており、空腹のままトレーニングをすることが最もよくないことだと言われていたりします。

あれ?じゃあ朝飯前ファスティング中の運動が良いと紹介してきたのは実はよくないの?

sponsored link

ラマダン中のボディービルダーを対象にした研究

ファスティングで起こる体内の変化の研究では、イスラム教徒のラマダンがよく対象になります。

ラマダン期間中は日の出から日没までは食事をとることができなくなります。断食時間は地域によって異なりますが、11時間から18時間くらい。

紹介する論文は、Journal of the International Society of Sports Nutritionに掲載されたラマダン中のボディービルダーを対象にした研究。アフリカ北部のチェニジア共和国で2011年8月1日に始まり、2011年8月30日に終了した実験です。[1]

16人の男性ボディビルダーが二つのグループに分けられました。

一つのグループは15時間の断食状態で8つの筋力トレーニングを行い(FASTグループ)、もう一つのグループは食事を摂ったあとでFASTグループと全く同じトレーニングを行いました(FEDグループ)。

ラマダン期間中、FASTグループは前日夜11時から翌日午後4時まで断食を行い(約17時間)、午後4時から午後6時に筋力トレーニングを行った後、午後7時から11時までの間に食事を摂るという生活。

一方のFEDグループは、食事を摂ったあとの午後9時から午後10時に筋力トレーニングを行うという生活。

参加者はラマダンの二日前とラマダン29日目に実験室に訪れ、身体測定と尿・血液検査を行いました。

実験結果

参加者のラマダン開始前の身体測定結果は以下の通り。

おおよそ均等になるように割り振られてます。

参加者たちが摂った食事内容もほぼ同じになるように調整されています。

特に食事制限はしていない、一般的なPFCです。

そして、ラマダンが始まって29日間指示された通りのトレーニングを各参加者が行った後の身体測定結果がこちら。

FASTとFEDの横の数字がそれぞれラマダン開始前と終了後の値。

様々な統計処理を行った結果、全てのデータにおいて両者には有意差は見られなかったとのこと。

一番気になるFASTグループのLBM(除脂肪体重)を見ても、ラマダン前後で全く変化していません。

体脂肪の減少量を見ても、やはり両者同等。

この結果から言えることは、ファスティング中の筋肉トレーニングによって筋肉の異化が亢進することはないということのようです。

有酸素運動についてはどうなのか?

筋力トレーニングでは筋肉がカタボることはないということでしたが、有酸素運動についてはどうなのでしょうか?

これについても同じグループが調査した報告があります。[2]

19人の男性を二つのグループに分け、先ほどの論文と同様に10人はファスティング状態で有酸素トレーニングを行い(FASTグループ)、残りの9人は摂食状態で同じ有酸素トレーニングを行いました(FEDグループ)。

有酸素トレーニングを行った時間も先ほどの筋肉トレーニングの実験と同様。

参加者らはラマダンの15日前、3日前、およびラマダン21日後、29日後に検査を受けました。

ラマダン3日前の参加者のデータがこちら。

こちらも均等に割り振られていますね。

食事に関しても同様。

PFCはおおよそ15 : 35 : 50。特に何かを制限しているわけではない、ごく一般的な食事内容と言えます。

結果は?

そしてラマダンの後の結果がこちら。

上から体重、体脂肪率、除脂肪体重(≒筋肉量)。

Bef-R : ラマダン開始4日前、Mid-R : ラマダン15日目、End-R : ラマダン30日(終了)、Post-R : ラマダン終了21日後。

データを見てみると、*マークがついているものがあります。これらが統計的に有意に差があったと判断されたもの。

まず、一番上のFASTグループの体重。それからEnd-RでのFEDグループの体重。

どちらも体重は落ちてますが、実際に統計的に有意に体脂肪が落ちたのはFASTグループの方だけ(FAST – End-R)。FASTグループの除脂肪体重も変化がありません。すなわちファスティング中の有酸素運動でも筋肉の減少は見られなかったとのこと。

FEDグループは体脂肪率に有意な差はみられず、統計的に有意差はなかったもののLean body mass(除脂肪体重)が若干減っていることが分かります。一方のFASTグループは除脂肪体重は維持。

つまり、FASTグループでは体重と脂肪が減ったのに対し、FEDグループでは主に除脂肪体重が減ってしまったとの結果。

Ramadan fasting and aerobic exercise practiced in a fasted state can be combined effectively to reduce body weight and body fat, as well as improving lipid profiles.

ラマダンファスティングと断食中に行われたエアロビックエクササイズは脂質プロファイルを改善するだけでなく、体重と体脂肪を効果的に減らすのに効果的な組み合わせになり得る。

なんか通説とは逆の結果ですね。

ちなみに、今回の記事では載せませんでしたが血液検査の脂質に関連する項目の改善も見られています。

考察

ここまでの結果をまとめると、

  1. ファスティング中の筋力トレーニングでは筋肉のカタボリックを起こさない。
  2. ファスティング中の有酸素運動は除脂肪体重を減らさず、体脂肪が効果的に減少する。

実際のところ、ファスティング中の運動でカタボリックが起こらないのは、筋肉を保護する成長ホルモンなどの同化ホルモンの分泌が促進されるからだと言われていて、理論的にも以前から言われてきたことでもあります。[3]

それらが実験でも示されていたということになりますね。

ファスティング中の運動に関する論文はたくさんあるのですが、筋肉を減らさないという結果がほとんどで、むしろ空腹で運動したらカタボるという話はどこから湧いてきたのだろうという気さえしてきます。

ここでちょっと勝手な想像をしてみたいと思います。

こちらの実験によれば[4]、①ファスティング状態、②運動の1時間前にグルコース(0.8gの炭水化物/kg(体重))、③フルクトース、④グルコース摂取後脂肪注射を摂取した後に運動(20-30分)をした場合のエネルギー消費量を比較しています。

これによると、ファスティング以外の条件では全て脂質のエネルギー消費が下がっていることが分かります。

まあそれは当たり前と言えば当たり前。

興味深いのは、グルコースでは血糖グルコースだけなく筋グリコーゲンの需要も高まっていること。それだけグルコースに依存したエネルギー消費システムが稼働しているということになります。

グルコース摂取後4時間くらいは、インスリンなどの作用により脂肪の燃焼が抑制されます。実際には8時間以上も抑制されるとの報告もあります。[5]

筋グリコーゲンはトレーニングにも脂肪を燃焼するにも必要なエネルギー源なので、ファスティング前(例えば朝運動するなら夜ご飯)に炭水化物を補給しておくことは重要。

逆に言えばタンパク質でインスリンが分泌されることを考慮すれば、ファスティング時間に関係なく糖質制限下での運動では容易にカタボる可能性があります。

一方、トレーニングの数時間前にグリコーゲンを摂取することに関しては、敢えて脂質酸化が抑制され、かつ過度にグリコーゲン消費に依存した状態を作り出すことになり、体内の糖質が枯渇した場合には筋肉を分解して糖新生に回される…という流れは考えられますが。

つまりトレーニングの燃料として糖質を摂取したタイミングからファスティング時間が短すぎたために逆にカタボってしまった?

うーん、どうなんでしょう?笑

筋グリコーゲンさえ枯渇して無ければそもそも運動中にカタボるなんてことは起きないのでは?

誰か教えてください。運動中にカタボるメカニズム。

まとめ

  1. ファスティング(15時間前後)中の筋トレ・有酸素運動で筋肉が分解されていくことはない。
  2. ファスティング中の有酸素運動では筋肉を維持したまま脂肪燃焼が促進しやすい。
  3. 糖質摂取後8時間は脂肪燃焼が抑制される可能性もある。

今回紹介した論文の問題点をあげるとするなら、全て対象が男性であるということです。女性を対象にしたファスティング中の運動に関する論文はまだまだ少ないようです。イスラム系の社会では女性が積極的に運動するような環境ではないのでしょうか?

最後に一つだけ注意事項として。

ファスティング中の運動は脱水になりやすいので水分補給だけはしっかりやっておく必要があります。(腎機能低下につながる可能性があるとの事)

水だけは断食しないようにー

sponsored link

断食カテゴリの最新記事