高タンパク食でインスリンが出たら血糖値は下がるのか上がるのか

プロテインを飲むと眠たくなるという人が時々います。でも全く眠たくならないという人もいます。

この違いはなぜ起こるのでしょうか??

ここには、血糖値のアクセルを踏むホルモンとブレーキを踏むホルモンの絶妙な駆け引きがあります。

 

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タンパク質によるインスリン分泌と組み合わせによるインスリン分泌量の変化

炭水化物を食べれば、血糖値が上昇しインスリンが分泌されるというのは良く知られています。しかしタンパク質だけを食べてもインスリンが分泌されることについてはまだ一般的ではないようです。

まずは、タンパク質でインスリンがどのように分泌されるのか、そして様々な食品を組み合わせた時にはどのような変化を示すのか見てみます。

タンパク質によるインスリンとグルコースによるインスリンの比較

下のグラフは①タンパク質、②グルコース、③タンパク質とグルコースを一緒に摂取した場合の5時間までのインスリン分泌をグラフにしたものです。

タンパク質によるインスリン分泌

グラフからもわかるようにタンパク質単体でもインスリンが放出されていることが分かります。

タンパク質よりもグルコースの方が立ち上がりは早いですが、2時間後にはタンパク質の方が高くなっています。タンパク質の方が長くインスリンが分泌される傾向があると言えます。この傾向は他の論文でも同様の傾向です。

タンパク質とグルコースの組み合わせでは、それぞれを単体で摂取したときの2倍以上のインスリンが分泌されていることが分かります。また、ピークが2時間後にやってくるという特徴もあります。

脂肪を組み合わせるとどうなるのか?

さらに脂肪を組み合わせた時の血糖値変動(上)とインスリン分泌量(下)を比較したのが下のグラフです。

 

下のグラフから、

炭水化物 > 炭水化物+脂肪 > タンパク質 > タンパク質+脂肪 の順でインスリン分泌されることが分かります。

いずれの実験も50g摂取時の実験ですので、最初の実験結果を合わせると、

炭水化物(グルコース)+タンパク質 > 炭水化物 >炭水化物+脂肪 > タンパク質 > タンパク質+脂肪 > 脂肪

という順序でインスリン分泌量が多くなります。 インスリン分泌量だけで議論すれば、左に行くほど太りやすい組み合わせであると言えます。

炭水化物+タンパク質と言えば、身近なものでは寿司や牛丼、ハンバーガー、TKGのような料理になりますね。

私たちの食欲をそそる料理はインスリンも分泌しやすいと言えます。

食品毎によるインスリン分泌量

ここまで見てきたように、インスリンは炭水化物だけでなくタンパク質でも分泌されます。唯一純粋な脂肪(オリーブオイルや脂肪)だけがインスリンを分泌させないことが知られています。

ほとんどの食品はタンパク質と炭水化物のどちらか、あるいは両方を含んでいるため、ほぼ全ての食品はインスリンを分泌させることになります。

そのデータを集めたのが、フードインスリンインデックス(FI値)と呼ばれる値です。

これはオーストラリアのシドニー大学のグループが、大学生を対象に調査したデータをまとめたものです。

1000kJ(239kcal)の異なる食品を与え3時間にわたってインスリンの応答を測定し、純粋なグルコース(ブドウ糖)を100とし、食品によって分泌されるインスリン分泌量の割合(グラフが示す面積比)によって決定されます。

グラフを見ればわかる通り、例えばタンパク質が豊富な白身魚は炭水化物のみの全粒パスタよりも多くのインスリンを刺激することが分かります。

食品に含まれる糖質量と食物繊維量に対して緩やかな相関はあるものの、食品によっては近似直線から大きく外れるものも存在します。

糖質制限をして血糖値の変動が小さくなったとしても、裏ではインスリンはきっちり出ています。

プロテインを飲むと眠くなるのはなぜ?

ところで、プロテインを飲むと眠くなるという人がいます。

この理由はプロテイン摂取でインスリンが余計に出すぎた場合に低血糖になってしまい眠気を感じてしまうからです。

しかし、ほとんどの人は眠くなりません。

これはなぜでしょうか?

これにはグルカゴンというホルモンが重要な働きをしているからです。

グルカゴンとは?

タンパク質の消化において重要なもう一つのホルモンがグルカゴンです。

グルカゴンは膵臓のα細胞から放出され、肝臓に蓄えられているグリコーゲンを血液に放出させるホルモンです。つまり血糖値を上昇させるホルモンです。

インスリンが血糖値を下げるホルモンであるのに対し、グルカゴンが血糖値を上げるホルモン。

インスリンがブレーキならグルカゴンはアクセルといった感じでしょうか。

また、最近ではタンパク質の代謝で生じるアンモニアを尿酸に分解する役割もあるのではないかと考えられています。

 

炭水化物を摂取したときとタンパク質を摂取したときのインスリンとグルカゴンの違い

炭水化物を摂取した場合のインスリンとグルカゴンの応答を見てみます。

上の図に示すように、炭水化物を摂取すると血糖値が上昇しそれに伴ってインスリンも上昇します。

一方、グルカゴンは肝臓からグリコーゲンが放出されるのを防ぐために分泌量は減少します。経口によるグルコース摂取があれば、肝臓からわざわざグリコーゲンを放出する理由がないからです。

 

次にタンパク質を摂取したときのインスリンとグルカゴンの応答を見てみます。

タンパク質を食べると、グルカゴンとインスリンの両方が上昇し、安定した血糖値を保ちながら筋肉や組織・神経伝達物質などを修復するタンパク質の貯蔵と利用を促進します。

健康な人の場合、タンパク質を食べても血糖値の変動はほとんど起きません。しかし、それはグルコースを減らそうとするインスリンと増やそうとするグルカゴンのブレーキとアクセルのバランスが保たれているからです。

逆にこのバランスが崩れると血糖値が上昇したり、下降したりします。

タンパク質を食べて(プロテインを飲んで)眠くなってしまう(低血糖になってしまう)のは、グルカゴンの作用が弱すぎるかインスリンの作用が強すぎる場合に起こります。

インスリン抵抗性がある場合のタンパク質に対する応答

正常な人の場合は、インスリンブレーキとグルカゴンのアクセルが保たれ、血糖値はほどんと変化しないことが分かっています。

しかし、インスリン抵抗性を持つ人(糖尿人や境界型)の場合は状況が変わってきます。

インスリンは血糖値を下げるだけでなく、筋肉を構築したり組織を修復したり、タンパク質を代謝させるための必要なホルモンです。

インスリン抵抗性がある場合は、タンパク質がうまく代謝されないことがあり、必要以上のインスリンが放出される傾向があります。その結果より多くの脂肪が貯蔵されることになります。

上のグラフは二型糖尿病の患者(黄色)と健常者(白)のタンパク質に対する血糖値(左)とインスリン反応(右)を示したグラフです。

糖尿病患者はタンパク質摂取後にインスリンが高レベルに上昇します。健常者は4時間で元のインスリンレベルに戻っており、血糖値の変動もほとんどありません。

したがって、プロテインや高タンパク食後に睡魔に襲われてしまう人は、インスリン抵抗性によるインスリン過多のために低血糖状態に陥っていることが考えられます。

一型糖尿病などインスリン分泌が極端に弱まっている状況では、グルカゴンの作用が高まり血糖値が上昇します。

タンパク質でインスリンが分泌される機序

ところで、タンパク質を摂取するとどのようにしてインスリンが分泌されるのでしょうか?

実はタンパク質(アミノ酸)がインスリンを分泌させる機序はまだよくわかっていないようです。

しかし、いくつかの実験から仮説が立てられています。

インスリン分泌を促進するインクレチン

炭水化物を摂取すると血糖値を下げるホルモンであるインスリンが膵臓から分泌されますが、糖を経口摂取する場合では経静脈投与よりも大きなインスリン作用が現れることが分かっています。

経口摂取ではインクレチンと呼ばれるホルモンがインスリン分泌を促進するためです。

インクレチンにはGIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)GLP1(グルカゴン様ペプチド-1)があります。

GIPとGLP-1は小腸から分泌されるホルモンです。

GIPを分泌する細胞はK細胞とよばれ、主に十二指腸、空腸を中止とした小腸上部に存在します。一方GLP-1を分泌する細胞はL細胞とよばれ、主に小腸下部に存在すると言われています。

インクレチンが分泌され、膵臓のβ細胞にあるそれぞれの受容体に結合するとインスリン分泌が促進されます。これをインクレチン作用といいます。

アミノ酸とインクレチン

インクレチンは血糖依存的であり血糖値が上がった時だけ分泌されるというのが一般的な理解でしたが、実際はタンパク質(アミノ酸)でもインクレチンが分泌されることが分かっています。

こちらの論文ではグルタミンを使って実験を行った結果、グルタミンが生体内でGIP、GLP-1の分泌を増加させることを明らかにしています。

グラフの●はグルコース、○はグルタミン、■は水を摂取したときの健常者におけるGIPとGLP-1の分泌変化です(論文では肥満者と糖尿病患者のデータもあります)。

グラフから分かる通り、グルコースと同様にグルタミンもインクレチンの分泌を刺激していることが分かります。

これらの分泌のメカニズムは実際のところまだよくわかっていませんが、GLUTag細胞においてグルタミンを含む多くのアミノ酸がGLP-1分泌を刺激し、おそらくまだ発見されていないGタンパク質共役受容体の活性化によって、ナトリウム結合摂取および細胞内cAMPの上昇を介して分泌が起こっているのではないかと考えられています。

食品タンパク質(乳製品、チーズ、ホエイ、タラ、小麦グルテン)もまた、インクレチンを刺激しますが、分泌を刺激する能力は食品によって異なっています。

お気づきのとおり、インクレチンは全ての食品によって刺激されます。

何か食べれば、何か胃の中に落ちてくれば、インクレチンが出てインスリンが出ることになります。

まとめ

  • タンパク質を摂取するとインスリンが分泌される
  • タンパク質、炭水化物、脂肪の組み合わせによってインスリン分泌量が異なる
  • 結果的にはすべての食品がインスリンを分泌する
  • 食品毎の分泌量はFI値としてあらわされる
  • 炭水化物ではグルカゴンは分泌されないが、タンパク質ではグルカゴンがインスリンと同時に分泌される
  • 健康な人はインスリンとグルカゴンのバランスが保たれ、タンパク質で血糖値は変動しない
  • インスリン抵抗性があるとインスリンが過剰に分泌され低血糖になる
  • 特定のアミノ酸でインクレチンを刺激するものがあるよう
  • それがインスリン分泌を刺激する
  • 結局すべての食品がインクレチンを刺激する

 

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Reference

https://www.diapedia.org/metabolism-insulin-and-other-hormones/5105252812/incretin-secretion-direct-mechanisms#fnref:9

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15531672

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19056578

http://www.med.nihon-u.ac.jp/department/dmet/research/subject_dpp-4.html

http://www.igaku.co.jp/pdf/tonyo1001inc-3.pdf

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%AF%E3%83%AC%E3%83%81%E3%83%B3

http://www.radionikkei.jp/archives/200907/208/4a692635d1e2b.pdf

http://www.chugaiigaku.jp/upfile/browse/browse1215.pdf

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/6389060

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/3538843