玄米白米分づき米の構造

お米は縄文時代後期から栽培が始まり、弥生時代には主食として食べられるようになりました。

2000年以上の日本のお米の歴史の中で、玄米のまま食べられていた期間はほとんどなく、ほとんどが精製された白米として食べられていました。玄米を炊くには白米よりも多くの薪を使わねばならなかったというのが理由のようです。

しかし、ビタミンB1を含まない白米は、江戸時代の脚気の流行を引き起こし多くの死亡者を出しました。現代では、2型糖尿病を始めとする様々な疾患との関連が明らかになっています。

一方の玄米については、豊富な栄養素と食物繊維については肯定的に語られるものの、フィチン酸や砒素、残留農薬などの問題があるため否定的な意見も少なくありません。

 

さて、日本人にとって最も身近で最も馴染みのあるお米を、私達はどのようにして食卓に上げればよいのでしょうか?

血糖値、インスリン、汚染、反栄養素など、様々な観点から考察してみたいと思います。

 

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玄米と白米と5分つき米の栄養素の違い

白米はほとんどが炭水化物のみであり、含まれているビタミンミネラルは僅かです。

一方、玄米は全粒粉であり、米糠と胚芽にビタミンミネラル食物繊維が豊富に含まれています。

 

玄米と白米と5分つき米の栄養素を比較すると、下のような円グラフに表されます。

玄米白米5分搗き米の比較
http://kakaku.com/article/pr/14/08_yamamotodenki/index.html

米糠に多く含まれているビタミンEやビタミンB類は、精白されるにつれて極端に下がっていきます。一方、ナトリウムやタンパク質など胚乳に含まれる栄養素は玄米でも白米でも大きな差はありません。

また、玄米には抗酸化物質も豊富に含まれています。

 

玄米と白米の血糖値の変化

様々な研究によると、白米の消費が多くなるほど2型糖尿病のリスクが高まることが明らかになっています。特にアジア人ではその傾向が強くなると言われています。

実際に玄米と白米の血糖値上昇を比べてみるとどのような違いが見られるのでしょうか?(注:血糖値の変化は個人差が大きいです)

 

インディカ米を使った実験結果

インドのMadras Diabetes Research Foundationが発表した論文に、玄米と白米の血糖値上昇に関する実験結果が掲載されています。

玄米白米3分搗き米血糖値

BRと書かれた太い点線が玄米、WRと書かれた小さな点線が白米、そしてUMRと書かれた実線が分搗き米(およそ3分搗き米)です。

血糖値上昇の値はどのお米でもほぼ同じですが、玄米だけが速やかに下がってくる傾向があり、白米と分搗き米だけがだらだらと高い値を維持する傾向があります。

こちらのNational University of Malaysiaが発表した論文でもほぼ同様の傾向です。

 

玄米と白米と分づき米のインスリン分泌量

血糖値に関しては、玄米と白米とでは食後一時間後の値に違いが出てくるものの、上昇率ではほとんど違いがありませんでした。

一方、追加インスリン分泌量についてはどうでしょうか?

下のグラフはインドのMadras Diabetes Research Foundationが発表した論文で報告されているインスリン分泌量の結果です。

この結果によると、被験者の中間値は白米(WR)が47.9に対して玄米(BR)は39 IU/mlとなっています。

興味深いのは分づき米(UMR)です。この研究での分づき米は3分搗き程度(どちらかというと玄米寄り)であるにも関わらず、白米とほとんど変わらない量のインスリンが分泌されています

 

この傾向はマレーシア大学の論文でも同様で、やはり白米と分搗き米は同等で玄米だけが低くなっています。

玄米白米分づき米インスリン比較2

なぜ玄米だけがインスリン分泌が少なかったのか?

ではなぜ玄米だけが、インスリン分泌が少なくなったのでしょうか?

論文では、食物繊維の量が少しでも減ってしまうことが消化に関わるホルモンの分泌量を著しく変化させると書かれています。

 

一般的に、食物繊維が多くなるとインスリン分泌量が少なくなることが知られています。

このような結果から、玄米に含まれる食物繊維がインスリン分泌に影響を与えたことが大きな理由であることが考えられます。

 

玄米に含まれる反栄養素の問題

インスリン分泌の結果から考えると、お米を食べる際は白米よりも玄米の方がメリットがあるといえそうです。また、分づき米はほとんど白米と同じ挙動を示し、栄養面から見ても大きなメリットがあるとは言いがたいと言えます。

一方で、玄米にはフィチン酸や砒素などの反栄養素が含まれているため、玄米の方がデメリットが多いと主張する人もいます。

フィチン酸

玄米の胚芽部分にはフィチン酸とよばれるキレート作用の強い物質が含まれています。

キレートとはカニのはさみというラテン語に由来する言葉のとおり、金属イオンをがっちり挟み込みミネラルの吸収を阻害するといわれています。

 

特に鉄や亜鉛などの重要なミネラルに対して強いキレート作用を示すことが知られており、これらのミネラルの吸収を妨げることが懸念されています。

 

しかし、これらの話は確かによく聞くのですが、実際にフィチン酸でミネラル不足になった人はいるのでしょうか?

フィチン酸の影響による亜鉛不足

フィチン酸によるミネラル不足が最も大きく報告されたのは、1960年代に中東で起きた子どもたちの亜鉛不足による発育不足でした。

動物性タンパク質の摂取がほとんどなく、小麦のパンと豆だけの食事だったために亜鉛の吸収効率を下げるフィチン酸によって極度の亜鉛不足になったことが原因だと言われています。

しかし、これ以外は大きなニュースになった事例は見当たりません。

タンパク質を同時に摂取するなら問題ない?

フィチン酸が米糠などに閉じ込められた状態やタンパク質を同時に摂取する場合においては、ミネラルの吸収に問題がないとする報告もあります。

こちらの論文ではフィチン酸を同時に摂取する場合においても、タンパク質同時摂取下においては亜鉛の吸収効率には全く影響がなかったと報告しています。

フィチン酸が日本人の長寿に貢献?

そもそも、フィチン酸は玄米だけでなく、ゴマや豆やイモ類、他の穀物にも多く含まれています。

量や比率が多すぎる場合には、亜鉛不足などの栄養欠乏を引き起こすものの、適度なフィチン酸は血糖値や異常なコレステロールを抑制し、強い抗酸化作用から細胞損傷を防ぎ、ガンなどの腫瘍の発生を抑制するとも考えられています。

フィチン酸ではなくフィチン

さらに玄米などに含まれるフィチン酸は、すでに金属イオンが結合している状態(フィチン)であるため、他のミネラルと結合することはほとんどないとする見解もあります。


 

以上の結果から、フィチン酸による影響はタンパク質を極端に除去した状態で、毎食フィチン酸を主食としない限り、大きな影響を受けることは考えにくいと見ることもできそうです。

フィチン酸を除去するには?

とはいうものの、やはりフィチン酸の影響が気になるというのも本音です。

フィチン酸は胚芽部分に含まれており、一般的には水に一定時間浸して発芽玄米にすればフィチン酸が除去されると言われています。

しかし、あらゆる条件下で水への浸漬(soaking)、発芽(germination)、発酵(fermentation)を行ったところ、フィチン酸除去に本当に効果があったのは発酵だけだったとする報告があります。

下の表が示すように、フィチン酸(phytic acid)の除去率を調べた結果、浸漬(soaking)や発芽(germination)では、最大でも50%程度の除去率に留まる一方、発酵(fermentation)では96%以上の除去率であることがわかります。

フィチン酸除去の効果

ただ、毎回玄米を食べるために発酵処理させないといけないとなると、なんだか億劫になってしまいます。

ところが、この研究で行われた発酵処理の詳しいやり方を実際に著者に問い合わせた真面目な偉い人がいて、実は特別なことは何もせず玄米そのもので24時間発酵を行っていることが明らかになっています。

その24時間発酵のやり方とは以下のとおりです。

  1. 塩素を除去した水に玄米を24時間室温(やや暖かいところ)で浸す。この際、水は交換しない
  2. ここで使用した水の10%を保存しておく(長期間保存する場合は冷蔵庫で)
  3. 残りの水は捨てて新しい水で玄米を炊く
  4. 次に玄米を発酵させる際には、前回保管した10%の水を注ぎ足す
  5. このサイクルを繰り返す

この方法で24時間で論文の結果通り96%以上のフィチン酸が除去されるそうです。

ただし、発酵後の玄米のインスリン挙動は不明です。

 

アブシシン酸

玄米の悪影響が語られるときに挙がるもう一つの物質はアブシシン酸です。

アブシシン酸は、食物が乾燥から耐える為に産生されるファイトケミカルの一種で、発芽抑制物質ともよばれています。つまり植物が乾燥状態にさらされると、(水分の豊富な機会を待つために)発芽を抑制させようとしてこのホルモンが分泌されます。

アブシシン酸が人の体内に取り込まれると大量の活性酸素をもたらし、ミトコンドリアを傷つけガンや糖尿病を始めとする様々な疾患の原因になると言われています。

 

玄米のアブシシン酸について調査した文献はあまりありませんが、アブシシン酸は乾燥状態のときに多く分泌されるので、米が発芽が促進する環境(にあれば分泌は抑制されます。

従って、フィチン酸を分解する24時間発酵処理でもアブシシン酸は抑制されると考えられます。

注意すべき点は、市販されている発芽玄米です。これは発芽はされているものの、市販される際に乾燥状態にさらされているため、再びアブシシン酸が分泌されている可能性が高いです。

砒素の問題

玄米には毒性の高い砒素の濃度が白米よりも高いと言われています。

砒素は自然界に存在する重金属の一種ですが、特に無機砒素は毒性が高く、多くの米や米を原料とする食品から基準値以上の砒素が検出されます(例1例2例3)。

砒素による人体への影響

砒素の長期的な消費は、ガン心臓病2型糖尿病、高血圧と強い相関があると言われています。また、子供においては、学習と記憶能力社会的適応能力にも影響がでることが示唆されています。

さらに、妊娠中の砒素の摂取量が高くなると、胎児に悪影響を及ぼし、先天性異常や発達障害のリスクが高まることも示されており、まあこういう話だけを聞くとなんとも恐ろしくなってしまいます。

砒素を減らすには?

米の砒素を減らすには水でしっかり洗うことが有効であることが分かっています。この方法は白米でも有効です。

ある調査では、米を洗うときにお米の五倍の量の水を使うと残留砒素は43%になり、水に浸したあとに水洗すれば、18%にまで低下させることができることが明らかになっています。

水洗による米の砒素の除去率

しかし、使用する水の砒素濃度が高い場合は、逆に砒素の濃度が高まってしまうこともあるので注意が必要です。

玄米の農薬量

ほとんどの米には農薬が使用されており、米糠が残る玄米の残留農薬は白米よりも多いと言われています。

無農薬や有機栽培の米を使うことが、この問題を最も回避する解決策ですが(それでもゼロではないが)、長期での使用はコストの問題も生じてきます。

玄米に含まれる農薬を減量させるには、水洗が最も効果が高いことがわかっています。ただ農薬の種類によっては、除去率には限界があるようです。

一方で、「健康への影響」を前提とすれば、米の残留農薬の程度において玄米と白米の間に大きな差はないとする意見もあるようです。

 

結論

以上の考察から玄米と白米のどちらが良いという結論を出すことは非常に難しいですが、玄米にも白米にも偏りすぎず、量自体を減らしながら付き合うことが大事なように感じます。

そして玄米を食べるときには24時間発酵を行ってからしっかり水洗すれば、指摘されている玄米の問題の多くは軽減できると考えられます。

ちなみに、玄米から米糠だけを削って胚芽を残した胚芽米は、インスリンの観点から考えてもフィチン酸の観点から考えてもメリットはほとんどないと考えられます。

 

まとめ

  • 玄米には白米に比べ米糠に含まれる栄養素が多い
  • 分づき米は玄米よりも白米の栄養素に近い
  • 白米と分づき米を摂取したあとの血糖値プロファイルはほぼ同じ
  • 白米と分づき米に比べて玄米は血糖値が早く下がる
  • 白米と分づき米に比べて玄米はインスリン分泌が約20%少なくなる
  • 玄米の胚芽に含まれるフィチン酸がミネラルの吸収を阻害するという話は、動物性タンパク質を食べる人に対しては懸念事項とはならない
  • どうしても気になる場合は24時間発酵すれば96%のフィチン酸が除去されるが、この場合インスリン分泌がどのような挙動を示すのかはわからない。
  • そもそもフィチン酸ではなくフィチンなので問題ないという意見もある
  • 24時間発酵でアブシシン酸の影響も消える可能性
  • 玄米の砒素・残留農薬には水洗が効果的だが、農薬の種類によっては限界がある

 

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Reference