森林の中を散歩するとNK細胞や抗がんタンパク質の発現量が増加する

森林の中を散歩するとNK細胞や抗がんタンパク質の発現量が増加する

自然免疫力を高めるにはNK細胞の活性化させたり数を増やしたりすることが最も簡単で最も有効ですが、もし木が多いところを歩くだけで免疫力を活性化させることができるとするなら?

さらに体内でガンと戦うタンパク質を多く出現させることができるとするなら?

そんな「まさか」を調査した論文を紹介します。

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街中を歩くより森林地帯を歩く方が良い?

健康な日本人男性12人(35–56歳)を対象に、森林地帯と都市部の2泊3日の旅行を行いました。[1]

森林地帯(長野県上松町)への旅行では、1日目の午後に森林地帯を2時間歩き、2日目は午前と午後それぞれ2時間ずつ歩きました。3日目に参加者たちは旅行を終えアンケートを行って帰宅しました。

血液検査は、2日目(Day 1)と3日目(Day2)、そして旅行終了後の7日目(Day7)と30日目(Day30)に行われました。

一方、都市部の旅行は名古屋の市街地で行われました。

1日目は名古屋の伝統的な地区を2時間散策。2日目午前はナゴヤドームの周りを散策したのち、午後は名古屋空港の中や周りを散策。3日目に東京にツアーを終了して東京に戻ってきました。

血液検査の結果を順に見てみます。

まずは、NK(ナチュラルキラー)細胞の活性度。

Aが森林地帯を散策したときのデータ、Bが都市部を散策したときのデータです。

結果は明らかでした。

森林地帯を散策したときはNK細胞の活性度が高まっているのに対し、都市部では変化が見られませんでした。興味深いのは30日後にもその効果が持続していたこと。

増加率でみると(グラフC)、都市部ではわずかな上昇にとどまっていますが(黒)、森林地帯(灰色)ではDay2には80%程度まで上昇していることが分かります。

こちらのデータは、NK細胞の数の変化。

都市部でもわずかに増加していることが確認できますが、森林地帯での増加率には全く及びません。

次に、グラニュライシン(NK細胞ががん細胞を攻撃する際に放出されるタンパク質)[2]、パーファリン(細胞にアポトーシスを誘導するタンパク質)[3]、グランザイムA/B(腫瘍細胞を含む有害な細胞を排除するときに産生される酵素)[4]の変化を調べました。

これらが抗がんタンパク質と呼ばれています。

その結果がこちら。

Aが森林地帯、Bが都市部を散策したときのデータ。グラフは左から、GRN(グラニュライシン)、Perforin(パーファリン)、GrA(グランザイムA)、GrB(グランザイムB)を示します。

森林地帯での散策では有意な上昇がみられますが、都市部での散策ではわずかな上昇にとどまっていることが分かります。

このグラフは血中のアドレナリンの変化。

Aが森林地帯でBが都市部を示します。都市部では変化は見られませんが、森林地帯では有意に低下していることが分かります。ストレスが軽減されていると考えられます。

一方、T細胞についてはどちらも変化は見られなかったとのこと。

森林散策ではなぜ効果があったのか?

同じ歩くだけなのに、なぜ森林地帯を歩く方では良い効果が得られたのでしょうか?

研究者らは、木から放出されるα₋ピネンやβ-ピネンなどのフィトンチッドが影響を与えたのではないかと考えています。

フィトンチッドとは、樹木が傷つけられた際に放出される揮発性物質のこと。[5] 森林浴の効果の要因としてしばしば紹介される成分です。

研究者らの調査によると、森林地帯と都市部では1㎥あたりに含まれるフィトンチッドの量には圧倒的な違いがあることが分かりました。

著者らは以下のようにまとめています。

In summary, a forest bathing trip can increase human NK actibity, the number of NK cells, and the expression of intracellular perforin, GrA/B, and GRN. Forest bathing may contribute to decreased stress and improved immunity, and phytoncides from trees may partially contribute to this effect.

まとめると、森林浴の旅行はヒトNK細胞の活性化、NK細胞の数、そして細胞内のパーファリン、グランザイムA/B、グラニュライシンの発現量を増加しうる。森林浴はストレスの軽減と免疫力の向上に寄与する可能性があり、樹木から放出されるフィトンチッドはこの効果にある程度貢献している可能性がある。

まとめ

森林浴はNK細胞を活性化させ、NK細胞の数を増やし、細胞内の抗がんタンパク質の発現量を増やす効果がある。

またその効果は7日持続する。

外で散歩することは家でじっとしてるよりは身体に良いだろうというイメージはありしたが、可能なら木が多いところを歩く方がさらにメリットを得られやすいという可能性がありますね。

森林浴という「なんとなく身体に良さそうだ」という行動にも、科学的にきちんとその効果が示されています。

どんなに都市部で生きるようになっても、我々人間もやはり自然と共に生きてきた地球の一生物なんだなと思いました。

今年もどんどんキャンプに行こうw

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Reference

[1]https://journals.sagepub.com/doi/pdf/10.1177/039463200802100113
[2]http://www.bml.co.jp/r_and_d/article/article09.html
[3]https://health.joyplot.com/HealthWordsWiki/?%E3%83%91%E3%83%BC%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%AA%E3%83%B3
[4]https://www.bc-cytometry.com/Data/db_search/Granzyme_B.html
[5]https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%88%E3%83%B3%E3%83%81%E3%83%83%E3%83%89

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