エントロピー増大

物理の統計力学には、「エントロピー増大の法則」というものがあります。これは熱力学の第二法則を言い換えたものとして理解されます。

例えば、水の入ったビーカーに赤い絵の具を少したらすと、最初は水と絵の具は別々に存在しますが、徐々に絵の具が水に溶けていき、赤に染まっていきます。

そして、それはもう二度ともとの状態には戻らない不可逆な過程です。

このとき、最初の状態から混ざった後の状態で、「エントロピーが増大した」と表現します。

つまり、エントロピーが増大するとは「複雑さ」や「煩雑さ」「無秩序」などが増大した、ということを示します。エントロピーはこれらを表す物理量です。

 

私達の環境は常にエントロピー増大の法則によって支配されているといえます。

複雑性はどんどん増していくのです。

人口は増え、物は増え、法律が増え、手続きが増え、社会はどんどん混沌化していく方向にすすんでいきます。

しかし、これは統計力学によって支配されているので、ある意味では当然とも言えるかもしれません。

 

ところが、この「エントロピー増大の法則」の話をする前に、多くの人が忘れているある「条件」があります。

その条件とは、「熱力学的に孤立系において」というものです。

 

熱力学的に孤立系とは、物質のやり取りもなければ、熱のやり取りもない状態のことを言います。

この宇宙で最も大きな熱力学的孤立系は宇宙そのものです。ですので宇宙のエントロピーは増大し続けます。

 

小さな範囲で見れば、先ほどのビーカーもそうですし、ある意味では家族という団体、社会や国という組織もそうだといえます。

社会や国がエントロピー増大から開放されるためには、つまり熱力学的閉鎖系から開放されることが必要であると言えます。

 

この場合は熱や物質ではなく、人や情報と置き換えることができるように思っています。

逆に言えば、人と情報のやりとりが出来ないような孤立した組織や団体はエントロピーが増大していくのだと考えます。

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福岡伸一先生の『動的平衡』を読んで、まさにエントロピーを増大させないことこそ、動的平衡を保つことなのだと思いました。

常に情報や人のやり取りをしていく中で、客観的には組織全体としては変化しているようには見えない。しかし、中身は激しく入れ替わって常に古いものから新しいものが取り入れられている。

 

これこそが、社会における「熱力学的孤立系」からの開放ではないかと考えています。

 

家族を運営する身にとって、家族のエントロピーが増大することは、生命の動的平衡が崩れるのと同様、家族の破滅に繋がります。

 

家庭では人の入れ替えなんて出来ませんから、常に外界とのつながりを重視し、新しい情報を古い情報から入れ替えていくことが、家庭の動的平衡に繋がるのではないかと考えています。

 

これが停滞すると、家庭のエントロピーが増大し、病気や不和など不可逆的なことが亢進していくような気がしています。

 

しかし、こうして改めて外の社会を見渡したときに、「熱力学的孤立系」の多さにはびっくりさせられます。

 

おそらく増大しすぎたエントロピーは、これまでの歴史ではビーカーを割ることによって解決してきたのだろうと思います。

子ども達の未来にビーカーを割るようなことが起こらないよう、私たちの世代がなんとかせねばと福岡先生の本を読んで思いました。

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